拝府のしめかざり(阿波町 伊勢神社)
下分の拝府・樫谷・暮石では正月のしめかざりをしないという伝承を受け継いで、今も注連飾りをしない。
そのことについてこのような伝説がある。
昔、正月 15日の朝、ある若者が拝府の戸に出て来て、「拝府・樫谷・暮石のものみんなよってこい。正月の神さんが幸家屋(こうげや)の峠(上分と下分の境)で落ちて、伊勢にかえらなあかんのに、道に迷って困っている」というので、みんなが集まると、神様が「阿波のすべてのところに行っていた我々の仲間が、忌部神社と大麻神社に集まって、今日、伊勢に帰ることになっている。ところが道に迷って、帰る時間に遅れては弱るので、誰か送ってくれるとありがたい」という。
それではお送りしようと足の達者な若者が2〜3人で大野の峠まで送って行くことにした。
その道すがら神様は各地で見聞したいろいろなことを話してくれた。
別れ際に「何か望みはないか?神様事だとかなえることができるが…」と神様は言う。
「せっきにしめ縄をたくさんするのが忙しくてかなわん」というと「しめ縄は大蛇、だいだいは大蛇の目、串柿は大蛇のうろこじゃ。すさのおの命の名残りだから、そんなものはしなくてよろしい」といってくれた。
それで、しめ縄をしなくてよくなったが、そのかわりそれまでしめの内の15日は、畑へ人糞をまかないことになっていたが、1ヶ月は人糞をまかないことを約束して帰った。拝府ではそれからその約束がずっと守られてきた。ということである。
何気なく読んでいると、そのまま流してしまいそうですが、何となく似たような話を聞いたことはないでしょうか?
私の頭に浮かんだのは「出雲の神在月」の話。
これまで阿波の神社や神々を調べてきましたが、これまで阿波の「伊勢」に阿波の神々が集結するという話は今まで聞いたことがありませんでした。
そして、この珍しい伝説の中に数点気にかかる点を見つけたのです。
そして神山町の東隣り 入田町に鎮座する原初形態の神社「伊勢神社」があり、「伊勢神社」の移動ルートを見いだしたこと。
まさに「大野の峠」ですね。伝説の内容と立地条件が一致(?)するのではないでしょうか。
そして阿波町周辺にはさまざまな神様が祀られているんですね。
そもそも「出雲」とは島根県のことではありません。
「阿波の沿岸部」を「イツモ」と呼び、「伊勢」とは三重県だけではなく阿波にも存在。
言いたいことはもう分かりますよね。
「全ては阿波より始まった… 」
現在、大きな由緒ある神社はほとんどが阿波から出たもの。地名のコピーも然り。
これからこんな内容をわかりやすく紹介できればいいのですが。