awa-otoko’s blog

阿波の神秘的、不思議、面白い場所を記紀や地域伝承と絡めて紹介します

葦稲葉神社は本来どこに鎮座していたのか(上板町神宅)

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(地図★印が葦稲葉神社元地(推定))
 
かつては宮谷川と大山谷川に形成された扇状地の頂点、大山畑 芽野原に葦稲葉神社は鎮座していました。しかし山崩れで社殿は倒壊。
扇状地下端の宮ヶ谷川河畔に鎮座していた鹿江姫神社に遷座されてしまいました。
さらにその遷座先の鹿江姫神社も失火で社殿が焼失、現在の地である殿宮神社に移されたのであります。
 
過去の記事で神宅地区には山上の「奥宮」、山麓の「里宮」、田地の「田宮」という古代の祭祀形態があったのではないかということを記載しました。
奥宮は山際の畑地区となっている「芽野原」、里宮は「神宮寺」付近、田宮がすなわち「殿宮」(殿宮とは"たのみや"の転訛と言われる)付近であります。
 
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「神社誌」に記録する葦稲葉神社 本殿二社は神体山「大山」の男神「葦稲葉神」と、当地の産土女神「鹿江比売神」の祭殿であり、稲作の守護神である倉稲魂命、すなわち大宜都比売命。「御食津(みけつ)=御狐神」であります。(稲荷の総本山 伏見稲荷大社神山町神領 上一宮大粟神社大宜都比売命と葦稲葉神社の大宜都比売命である)
 
往古、神宅地区の人々は大山に葦稲葉神を奉祭し、鹿江比売神のいます扇状地周辺の茅原を開拓して田畑に変えたもので、鹿江姫が大宜都比売命へ、葦稲葉神が素戔嗚命に変化していく過程が現在でもうかがうことができます。
 
しかし!葦稲葉神とは大山住(祇)大明神そのもの。本来、大山住大明神を祭祀していた大山寺 奥の院 黒岩大明神が大山祇大明神発祥の地であり、後年便宜上麓に降ろされたのが葦稲葉神社なのであります。
 
また鹿江姫は野槌の神、野の神、草の神であり大山祇の妃神であります。
こちら神も大山祇大明神と同じくして殿宮神社、葦稲葉神社•鹿江姫神社として現在は鎮座しております。
 
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(現在の葦稲葉•鹿江姫神社、殿宮神社)
 
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境内社のこの小祠が元来の殿宮神社であるとの伝承もある)
 
 
しかし葦稲葉神社の跡地(元地)付近にはこのような神社があります。
 
戎神社と野神社。
 
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(戎神社)

 

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(野神社)
 
戎神社は南下した場所(神宮寺)に大己貴神社が鎮座するのが気になりますが、大山祇大神宮(現 大山寺)と葦稲葉神社の遥拝所の役割りをしていたのではないでしょうか。
 
大己貴神社鎮座地の地名は神宮寺。この近くの宮ヶ谷川の川畔に里宮にあたる鹿江姫神社が鎮座していた形跡が残り、祭神 鹿江姫(野槌神)を祀る野神社は上板の集落全体に分布していたとあります。
 
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また、大山祇神と鹿江姫の娘である木花咲耶姫はさらに南下した上板町 椎本野神に鎮座する「椎宮神社」が元社であります。
 
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(上板町 椎宮神社)
 
こちらは大水で社殿が流れ、石井町の桜間神社に移動しています。
 
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(石井町 桜間神社)
 
その後にも再度流されて名東町の椎宮神社、佐古の椎宮神社へも移動しています。
 
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(石井町 曽我氏神社)
 
ちなみに石井町 曽我氏神社でも祭神としても祭祀され、彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)と夫婦神とされております。
 
このように上板町大山周辺からは大山祇神(葦稲葉神)、鹿江姫(野槌神)の祭祀が伝播していくさまを追っていくことが可能なのです。
 
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調べたら面白いですが現地に赴いてもなかなかイメージするのは難しいです。そして上板町の山麓は道が細くてクネクネしているので方向感覚が狂います。
なかなか目的地までのアクセスが大変なのでおすすめはしませんが神の地である「神宅」。
山麓周辺を掘ってみたら面白いでしょうね。