「八重 事代主神」と「厳 事代主神」
さてさて、事代主神(ことしろぬし)。かなり複雑に広がりをみせる神です。
託宣神のほか、国譲り神話において釣りをしていたことから釣り好きとされ、海と関係の深いえびすと同一視され、海の神、五穀豊穣商売繁盛の神、としても信仰されている。七福神の中のえびすが大鯛を小脇に抱え釣竿を持っているのは、国譲り神話におけるこのエピソードによるものである。(Wikipedia)
記紀(特に現代訳されたもの)に記される「事代主神」は時代が違う場面に登場し、いかにも時空を超越した神として想像してしまいがちですが、以前から説明しているように「事代主」とは役職名です。一括りに「事代主神」とされていますが、同一人物(神)ではありません。
◼︎八重事代主神
現在も上勝町に「八重地」の地名が残り、「昔、禁裏に鳳車を輓かしむるに、福原村八重地牛を使役されたり云々(阿波名勝案内)」との伝承がある勝浦川上流域の地形から生まれた地名を尊称として冠した名であります。
葦原中つ国の大人(おうし)として活躍していた時の諱(いみな)として使われていた名が今も伝承されているのです。
◼︎厳事代主神
厳(いつの)事代主神は、阿波郡市場町(旧伊月村)に鎮座する式内 事代主神社祭神を指しています。
神功皇后摂政前記に「尾田(をだ)の吾田(あがた)説の淡郡(あわのこおり)に所居る神有り」として「天(あめに)事代 虚(そらに)事代 玉籤入彦厳之(たまきしいりひこいつの)事代神有り」と語られています。
「虚(そらに)事代」とは吉野川中流域、上流域の「そら」地方に名を馳せた事代主の意。(「そら」地方とは阿波で使われる美馬地方を呼ぶ方言で、記紀では高天原の意味で使われており、やまとの枕詞である「そらみつ」とは「美都(みつ)郷」のある旧美馬郡のこと)
「玉籤入彦(たまきしいりひこ)」とは、国つ神から唯一座宮中八座の中の一神として神座(ひもろぎ)に入り込んで祀られている男神の意。
ちなみになぜ「厳 事代主神」が大物中の大物にのし上がったのか、時間があれば書いてみたいと思います。 (まとめられなかったら書かないかも。。。)