awa-otoko’s blog

阿波の神秘的、不思議、面白い場所を記紀や地域伝承と絡めて紹介します

貞光の義人 原太郎左衛門を祀る三王神社

どうも。多忙でなかなか投稿する気にもならないところでアクセス数30万超過しましてありがたいやら申し訳ないやら。ということで急遽番外編 義人シリーズを投稿致します。(手前味噌で誠に申し訳ございませんな。( ´△`) )

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国道192号線つるぎ町貞光ゆうゆう館を通過し、西山の脇道から山裾に延びる坂道をぐっと登りますと三王神社がございます。この三王神社は小高い丘の斜面に鎮座し、眼下には悠々と流れる吉野川の流れを眺めることができます。。。が、何故か寂しさを感じる雰囲気を持つ場所なんですね。今回はなぜこの場所に神社が造営されたのか、誰を祭祀しているのか、ほとんど知る人はいないと思いますので awa-otokoが歴史の中に埋もれた断片を掘り起こしてみたいと思います。

古い時代、吉野川の流れは現在とは大きく違っていて、美馬郡貞光村の字西崎から流れは二つに分かれ、一つは山沿いに南を松尾神社の下から丸淵を経て江の脇へ、一は北を鴻淵を流れて江の脇で二つが合流していました。現在の貞光の北半分は水底にあったため、大雨にあうと濁流は物凄い勢いで沿岸を流れて住民は逃げ帰ってみれば土地も家も惨憺たる有り様だったことが多くあったようです。
明暦年間、代官 原太郎左衛門は住民のためこの難儀を救おうと決意し、西崎に関を設け東に堤防を築いたならば被害を食い止めることができる結論を得て藩主に願い出て許しを得ました。まずは西崎の山に登って地形を調査して、東へ底幅八間、天幅三間、高さニ間半、長さ二百八十八間の堤防を築造する工事に取り掛かったのです。
しかし何分にも阿波国始まって以来の大工事。いざ工事に着手してみると予期せぬ困難が次から次へ続出しました。まず最初の問題は、あまりの難工事のため労役に耐えられず、仕事を棄てて逃げる人夫が日増しに多くなったこと。太郎左衛門はこの対策として仕事に従事した者に一文銭を掴み取らせて一日の労費としました。しかし折角の妙案も力仕事ができぬ女や子供がたくさん金を握り、頼りになる男達はそれ程掴めないうえ、費用の点で非常な不足を生じたようです。「太主に嘆願して頂いた費用も工事の完成せぬうちに無くなってしまった。これではわしの男が立たぬ。」と太郎左衛門は苛立ちを隠せませんでした。しかしさらに工費に大きな穴を開け、その金策もつかなくなり、遂に私財の全てを投げ出して進めました…。完成を焦った太郎左衛門は近辺村々に触れを出し莫大な夫役を課してしまい、これに耐えかねた農民は困苦を藩主に訴え、藩からは友伝某が調査に赴き、結果的に太郎左衛門の努力は認められずに役所を追われる身になってしまったのです。

f:id:awa-otoko:20180204084901j:image(三王神社)

f:id:awa-otoko:20180204084919j:image(三王神社の拝殿内)
自らが招いた結果を悔いた太郎左衛門は、西崎山の平らな青石上に端座し、眼下に流れる吉野川の工事を見下ろしながら、九寸五分の短刀を左の脇腹に突き立て一文字に引いて自らの命を閉じました。(供をしていた二名の家来も追腹)努力を傾けた救民の事業のために敗残の身になりとても無念であったでことでしょう。

f:id:awa-otoko:20180204090155j:image(眼下を流れる吉野川
その後、貞光村の前を通る吉野川を上下する舟は、必ず太郎左衛門が切腹した敷石の上に神酒を供えて祈ったといいます。そうすれば太郎左衛門の霊が守護してくれると信じられていたそうです。そしていつからか敷石を上にあげて祠を建て三王さんと呼び、祭祀を行うようになりました。三王神社は貞光町が太郎左衛門起案の堤防によって洪水から救われた恩恵への感謝のため造営された義人 岡太郎左衛門を祭祀する神社なのであります。

f:id:awa-otoko:20180204084947j:image(原太郎左衛門を祀る祠)

f:id:awa-otoko:20180204085004j:image(二つの祠は追腹を切った従者かな?)

立派な青石の上に祠を乗せていますね。この祠の敷石がまさに岡太郎左衛門が切腹した敷石なのでございます。そしてこの場所は堤防工事を監視する上で絶好の場所であったため太郎左衛門が常に思案を巡らせた場所でもありました。(哀しいかな、結果この場所で散ってしまうのも何かの因果か… )

個人的には太郎左衛門の管理能力不足こそ大きな問題だったと考えるのですが(厳しいですが。)、結果神霊に転生され、現世に於いても語り継がれるのは立派な死に様であったからこそでしょう。

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近隣の住民の方は是非とも参拝してあげましょう。そしてこれを読んだそこの中間管理職のあなたも。きっと神となった原太郎左衛門が御利益を与えくれますよ。ではでは。(・∀・)