天香具山と畝火山、そして耳梨山(日の峯山、中津峰山、多家良町八多)
阿波では日の峯山と中津峰山を同日に訪れると悪いことが起きるという言い伝えがあります。
もう少し詳しく説明すると、中津峰山を居城とした須勢理比賣命の氏族と天香具山(日の峯山)を支配していた天香命の氏族の対立があったからで、各々の神社で祭りを同時に行うと大喧嘩となり、昔から絶対に同日に神事や祭事を行いません。
これを大きく捉えると、神代からの出雲海人族と天津(天孫)山上農耕民族の争いが尾を引いていると考えられ、畝火の中津峰山と天香具山(日の峯山)の間に挟まれた耳梨山(多家良町八多)の住人はどちらの味方もできずに、大変困っていたことと思います。
耳梨山の住人とは…八多(はた)の氏族。
すなわち八咫烏(やたがらす)。
(のちに秦氏とも…)
八咫の鏡は白銅鏡(ますみのかがみ)であると云われ、天香具山の「かぐ」とは朝鮮語を語源とした銅の古語であることから、八咫烏は異文化をもたらした渡来人集団であった可能性が高く、出雲と天孫の争いの狭間で活躍する機会を伺っていたのではないでしょうか。
神話に、香久山(女神)が新たに現れた畝傍山(男)に心移りをして、古い恋仲の耳梨の山(男)と言い争いをした伝承が残っています。
原文:
高山波 雲根火雄男志等
耳梨與 相諍競伎 神代従 如此尓有良之
古昔母 然尓有許曽 虚蝉毛 嬬乎 相挌良思吉
現代訳:
香具山は畝傍山がいとしくて
耳成山と戦った
神代からそうだった
昔からそうだったのだから現代でも妻を奪い合うのですよ